最近増えている耳と鼻の病気

花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)

 原因として春先のスギ花粉が最も代表的ですが、年々増加傾向にあり、低年齢化が問題となっています。すなわち、小さなお子さんにも発症例が増えているのです。また、スギ花粉に引き続いて飛ぶヒノキ花粉症も増えています。その他、イネ科(カモガヤ)、キク科(ブタクサ)などの花粉によって、夏から秋にかけて症状が出る患者さんも増加しています。花粉症では「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」の3大症状の他に、「目のかゆみ」はうっとうしい症状です。その他「のどのかゆみ」「皮膚のかゆみ」を伴うこともあります。症状はある年、突然出てきます。花粉症と診断されたら、翌年からは発症前に薬の内服を開始して、症状がひどくならないようにしましょう。関連疾患として、通年性アレルギー性鼻炎があります。

【関連疾患】
通年性アレルギー性鼻炎:ハウスダストやダニが原因です。「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」の症状は、朝起床時、冷房、風呂上がりの湯冷め時などに出ます。一年中症状が出るので治療がおろそかになりがちですが、症状が強いと集中力が落ちるので、積極的に治療を受けた方がよいでしょう。通院治療を継続しても、鼻の粘膜の腫れがとれないことによる「鼻づまり」が強い場合は、手術治療という選択肢もありますのでご相談ください。

好酸球性副鼻腔炎

 鼻の中(鼻腔)の周囲には副鼻腔と呼ばれる空洞がいくつかあります。白血球の一種である好酸球が副鼻腔粘膜内で増えているところから、この名前が付けられました。大人の方に見られる病気です。慢性副鼻腔炎(ちくのう症)の一種ですが、鼻の中でポリープが大きくなって鼻がつまりやすくなり、鼻汁(鼻漏)が非常に粘稠なため鼻をかんでも出にくい特徴があります。適切な治療が必要となりますが、治療に抵抗してなかなか良くならない場合があり、一旦落ち着いても再発しやすいのでやっかいな病気です。ポリープが大きい時や治療に抵抗する場合は手術が必要になります。この病気は、喘息で治療を受けているか、過去に喘息と診断されたことがある方に多くみられます。また、鼓膜の奥にある中耳に非常に粘稠な液が貯留し、難聴や耳閉感を自覚する好酸球性中耳炎が合併することもあります。

【関連疾患】
慢性副鼻腔炎(ちくのう症):お子さんにも大人の方にもみられる病気です。副鼻腔の炎症によって色のついた鼻汁が出て、鼻づまりが生じます。その他の症状として、頭痛、頭重感、目の奥が痛い、咳が挙げられます。症状が軽いうちに治療を開始すれば、通院でほとんどの人が治ります。放置していた期間が長いと病変が高度になり、手術が必要になります。早めに治療を開始しましょう。

好酸球性中耳炎:鼓膜の奥の中耳に非常に粘稠な液がたまる病気です。症状は、難聴、耳閉感です。鼓膜に穴をあけて中耳の貯留液を吸ってみると、とても粘稠で吸い取りにくく、ゼリー状になっている場合もあります。好酸球性副鼻腔炎と同様に治療に抵抗し、長期間にわたって通院が必要になります。

低音障害型感音難聴

 最近増えてきている急性の難聴で、20代~40代の女性に多くみられる病気です。ストレスや疲労が発症の引き金になると言われています。「耳がつまった感じ(耳閉感)」、「耳の中に水が入った感じ」、「音が耳に響く」、「低い音の耳鳴り」などの症状を自覚して受診される方が多いのですが、「難聴」を自覚することは少ないのが特徴です。これは、低音部の聴力が軽度低下するだけであることがその理由です。ほとんどの場合、治療によって回復しますが、40%の人が再発すると言われています。再発予防のためには、睡眠を十分にとる、ストレスの解消、適度な有酸素運動(ウオーキングなど)、バランスのとれた食事を心がけましょう。関連する疾患として、突発性難聴メニエール病があります。

【関連疾患】
突発性難聴:ある日突然、どちらかの耳に「難聴」を自覚する病気ですが、難聴は低音部だけでなく他の周波数域にも及ぶことが特徴で、「低音障害型感音難聴」との大きな違いです。「耳鳴り」を自覚するので非常に不愉快です。「めまい」を伴うこともあります。難聴の程度が軽ければ通院で治療できますが、中等度~高度の難聴がある場合は入院治療が必要となります。

メニエール病:低音部に難聴が生じる点は「低音障害型感音難聴」と同じですが、「回転性のめまい」と、「吐き気・嘔吐」などの自律神経症状が強く出ます。初期には治療によってめまいが改善するとともに難聴も改善しますが、めまいを繰り返しながら難聴が悪化していく場合もあるので、注意が必要です。この病気の中には、めまいがなく、難聴だけが出現するタイプの「蝸牛型メニエール病」もあります。いずれも内耳の中にある「内リンパ液」が過剰になることが原因です。

耳管開放症

 鼓膜の奥の中耳と鼻の奥をつないでいる「耳管」がゆるんだ状態です。「耳がつまった感じ」「自分の声が耳に響く」という症状が典型例です。女性に多く、ダイエットなどで体重が減少した時に起こりやすいのが特徴です。これらの症状は、ベッドに寝ると軽くなるので、自分で診断ができます。関連する疾患として、耳管狭窄症滲出性中耳炎があります。

【関連疾患】
耳管狭窄症:耳管はいつも閉じた状態になっていますが、つばを飲み込んだり、あくびをしたりすると開きます。トンネルに入った時に耳がつまった感じがしますが、だれでも無意識のうちにつばを飲み込んで耳管を開き、つまった感じを治しているのです。耳管狭窄症では耳管開放症とは反対に、耳管が開かない状態であるため、中耳の空気が粘膜から吸収され、中耳内の圧が徐々に低下した結果、鼓膜が内側に引っ張られて「耳がつまった感じ」になります。

滲出性中耳炎:耳管狭窄の状態が長く続くと、中耳の中に水がたまるようになります。この状態になると難聴が進行しますので適切な治療が必要となります。なお、この病気は子供さんに多く、自宅で「呼びかけても返事をしない」「テレビのボリュームを大きくする」といった状況があれば、この病気である可能性が高いと考えてください。